今回の本当の旅の目的、マルカンデパートのジャンボソフトクリームに辿り着き、見事に平らげた三人だったが、今度は花巻駅への帰り道で体力の限界が。
あと十数分で電車は出る。
三人は最後の力を振り絞った。
部長「ほら!見えてきたぞ!」
桃太郎「は、はい。」
旅人K「もう、駄目だ。」
部長「もうすぐだから!乗り遅れられないんだから!」
仙台に帰らねばならない。
時間も夕方。
冬の夕方は、日の落ちるのも早く、天気も曇っていて、周りはかなり薄暗くなってきていた。
この暗さが三人の心を不安にさせていた。
無口になっている三人に部長は声を掛けて励ました。
部長「よーし!着いたぞ!まだ間に合うか?」
桃太郎「はあ、はあ。まだ5分有りますね・・・。」
あっという間の40分というか、色々有った40分というか。
急いでる時の時間は本当にあっという間に感じたが、実際には5分も時間が残った。
花巻駅発16:44。
一ノ関行きの列車に乗り込んだ三人。
気がつくと汗びっしょりで、周りから見たら、なんでこの寒い一月に汗びっしょりかいてと思ったはず。
帰宅時間の通勤列車で車内は満員。
幸いにもドア側に立った桃太郎は、冷たく凍っているかのようなドアに顔や体を押し付けた。
満員の車内で二人と離れた桃太郎は暗く少しの明かりしか見えない外をずっと眺めていた。
そして、17:38電車は一ノ関駅に到着。
ホームはすっかり雪が積もっていた。
最後の乗換えとなる。
一ノ関駅も帰宅ラッシュで賑わっていた。
着いた頃には、次の乗り換えのホームには人が並んでいた。
三人各々、ここまで来たんだから、ここまで帰ってきたのだから、焦らずに帰ろうと特に列に並ぶわけでもなく、ホームの傍らに立っていた。
一ノ関駅の滞在時間は17分。
17:55一関駅発の普通電車は桃太郎達三人を乗せて走り出した。
この電車に乗り込んだ時、初めて三人はホッとした。疲れよりも、無事に最後の電車に乗れた。
プラン通りに行動出来た。
そんな事ばかり考えていた。
会話は無かったが、充実感たっぷりだった。
後にこの旅を振返った時に、まだまだ若い、あるいは浅い旅だと思うかもしれないが、この時の三人はもう完全にいっぱいいっぱいだった。
そして19:33定刻通り仙台駅に到着。
部長「お疲れ様!まずは帰ろう!」
三人はお互いの疲労の顔を見て、言葉少なにお互いの帰路に着く。
この後桃太郎は、ますます旅がしたいと考えるようになった。
自分が見たことも無い場所をたくさん見たくなった。
青春18切符が有れば、それが出来る。
桃太郎「本当に疲れたなあ。」
完