電車は、雪の米沢からさらに山に向かって走り出すように見えた。
米坂線は、山形の南方の山間を抜けていく路線。桃太郎には、まるで山に向かって走るように見えていた。
高い山をかわすため北西に山際を走っていく。
昨日から荒れた天気で遠くまでは見えないが、電車が雪をかき分けて雪煙を出しながら走るのが趣が有る。
ローカル線の為、一日に片道10本ちょっと。
雪が降れば、線路にも路肩にも雪が降り積もるのであろう。
桃太郎「それにしても、うるさい列車ですね。」
旅人K「そうだね。昔の電車はこういうもんだよね。今は懐かしいけど。」
桃太郎「話す声も大きくなるなあ。」
今の電車の様にクッション性が有るわけでもなく、横揺れがしないわけでもない、このローカル線の国鉄上がりの電車が、今のご時世に…と桃太郎には思えた。
桃太郎「これってどれ位乗るんでしたっけ?」
旅人K「二時間位かな。」
桃太郎「そんなに?」
桃太郎の心には、すでにもう十分味わったよ、早く着いてくれよ。という気持ちだけだった。
どう見ても何時間も乗客を乗せて走れるだけの体力の有る電車には思えなかったからである。
部長「まあ、落ち着けよ。」
部長もソワソワ気味の桃太郎の気持ちが伝わったのだろう。
旅人Kは車窓を眺めながら遠い目でカモシカを本当に探してるように見えた。
旅人Kは何処までが本当の話なのか全く読めない人だと改めて思った。
米坂線は、地元仙石線同様、開通から80年を超える路線。社内が疎らかと言えば、大体のシートには人が座っている。
高齢者が殆どだが、若い人も居る事は居る。終点まで行くのではなく、途中から乗り途中で降りる人が多い事から、買い物、通勤通学に重宝されている路線だと分かる。
部長「いよいよ、新潟県か。東北を出るわけだな。」
桃太郎「最初は、東北を出る事の意味が分かりませんでしたが、いよいよと言われると、目的地の坂町がどんな街なのか気になるし、東北を出たという実感が得られるのか楽しみです。」
山形県も奥地に入り、新潟県との県境まで来ると、山幅も狭まってきた。いよいよ山形を抜けて、東北を出て、新潟県に入っていく。
つづく