いよいよ当日を迎えた。
朝からワクワクが止まらなかった桃太郎は集合場所にいの一番に着いていた。
そこへ部長到着。
部長「おう桃太郎!着いてたのか?まだ早すぎる位の時間だぞ?」
心を見透かされた気がして桃太郎はとっさに、
桃太郎「遅刻してはいけないと思って。」
と言い返したが、部長は何も言わなかった。そこへ旅人K登場。
旅人K「よう!!楽しみだね~旅。皆で旅しようか。」
相変わらず陽気なおじさんキャラでは有るが、この場の重い雰囲気を感じていた桃太郎には救いだった。また彼の陽気な話し方のお蔭で自分のワクワク感が表情に出せた事で自然に大きく笑えるようになった。
部長「さて、じゃあ行きますか!いざ東北脱出!」
桃太郎「どこに行くんですか?聞いても言わないんでしょうけど。」
部長「そうだな。教えられないけど東北から出るぞ!」
この言葉に呼応するのは旅人Kだけ。桃太郎は不安を抱えていた。
部長「じゃあ、まずは仙山線だ。さあホームへ。」
桃太郎「仙山線?」
まずは西に向かうようだ。本当に日本海でも見る気だろうか。
仙山線は、陸羽東線の帰り道に乗った路線。
桃太郎は、仙台にずっと在住していたが仙山線は仙台から北山駅までしか乗った事が無かった。
それなのに、陸羽東線の旅では一気に走破。
しかもあっさり。それは桃太郎にとって、とてつもない冒険でもあったのだ。
部長に出合い、この旅をするようになっても、まだ桃太郎は遠くに旅する事に怯えていた。
旅とは不安を抱えるものだろうか。
多少の疑問と流れていく雪景色に顔色も曇りがちだった。
3月とはいえ奥羽山脈を越える頃にはまだまだ雪が残っていた。
部長「桃太郎どうした?うかない顔だな。行き先分からないから不満か?」
さすがに部長にも伝わるくらい不安な顔をしていたのだろうか。
部長が不満か聞いてくるなんて今までには無かったので、こちらもハッとした。
桃太郎「いや、雪が多いんだなと思っただけです。」
旅人K「まだ3月だからね。山奥にはこれ位の雪は残ってるんだよ。カモシカさんが見てるかもよ?」
桃太郎「カモシカ?」
旅人Kの言動に疑問は持ちつつ、奥羽山脈を越える仙山線。山形までは約90分。
朝御飯を食べ終わる頃には三人は談笑する位になっていた。
つづく