三人が米沢駅を出て、もうすぐニ時間が過ぎようとしていた。
部長「次が終点坂町駅なんだが、厳密に言えば、もう新潟県に入ってるよ。」
桃太郎「えっ?何ですか?」
部長「さっき小国駅が有ったろ?あれが山形県最後の、いや東北最後の駅だったの。」
桃太郎「分かってたなら、その時伝えてくれたら…。」
部長「言うか言わないか迷ったんだが。」
そう、すでに坂町駅の車内アナウンスが終わり、駅到着をワクワク顔で待っている桃太郎を見て、部長は今伝えねばと思ったのでしょうね。
まあ、坂町駅に付いてから言われるよりガッカリは減るから、部長正解ですよ、今で良かったんです、きっと。
桃太郎の声に出んばかりのブツブツもそこそこに電車は、坂町駅に到着。いよいよ新潟県に降り立った。
部長「駅舎の写真でも撮ろうか?」
桃太郎も駅舎を振り返った。
学校の校舎のような駅舎。
飾り気の無い駅舎だった。
しかし風情が有って、旅の臨場感は出ている駅だと思えた。
そして、駅前を見渡した。お店が数件見える。
宮城の駅なら何処と例えたら良いだろうか。
松山駅や鹿島台駅が近いかもしれないなあ。
まあ、まずは三人で来る初の東北以外の駅。感動的です。
駅前も何となく都会的な、近代的な、街中の駅で無くて良かったのかも・・・。
ん。田舎だと、本当の田舎だと遠回しに言ってる様に聞こえるな、これだと。
決してそうでは有りませんので。
桃太郎「部長、さっそく探索しますか?」
部長「そうだな、少し歩いてくる。」
部長はそう言うと、駅前ストリートを歩き出した。部長足が速い。
すぐに部長が小さくなっていった。
そして、見えない位遠くに行ってしまった。
旅人Kもフラフラと散策を始める。
確かに、込み入ってる訳でもないので迷子になる事も無いか。
誰も一言も発せないまま散策は続いた。
見渡す限り歩いているのは明らかに我々だけだった。
戻ってきた部長。
部長「あまり店は無いな。でも定食屋さん有ったよ。お腹空いたろ?」
桃太郎「そうですね。お腹空きました。」
部長「定食屋って隠れて結構美味しい店多いからな!期待出来るぞ。」
旅人K「確かに。」
三人は、本当はお腹が空いていた事をお互いに隠しながら旅をしていた。
まだ、駅弁を食べながらゆったり旅を楽しむほど旅に慣れていなかったからだ。
つづく