花巻駅発の電車が16:44に出る。
しかし、三人は駅から1km以上も離れた地元の人なら誰でも知ってるというマルカンデパートに居た。
今回の旅の最大の目的であるアイスクリームをたいらげるためだ。
待ち時間で1,2分だろうか、三人分のソフトクリームが出てきた。
それはまるで喉自慢のマイクのように各々の目の前に聳え立っていた。
三人はお互いの顔を見つめあい笑いを堪えていた。
面白いというより呆れた笑いである。
桃太郎「ぶ、部長でかいですね。」
部長「そ、そうだな。まずは写真に収めておこう。」
旅人K「これ食べきれるかな。」
部長「ど、どちらにしても食べるしかない。」
桃太郎「ぶ、部長!どもってます。」
部長「お、お前もな。」
携帯電話を二つ縦に重ねてもまだ足りないほどの高さのソフトクリームはなかなかお目にかかれない。
普通に売ってるソフトクリームが最高5巻位だろうか。
このソフトクリームは10巻にもなる。
見た目の問題なのだろうが、普通のソフトクリームなら2コは食べれそうな気がする。
しかし、2コが一気にのっていると圧迫感がある。
周りに目をやると遠くの方でお子様連れの家族がソフトクリームに戦いている我々を見てニヤニヤしていた。
桃太郎「冬に三人でこのソフトクリームは、見た目にも滑稽でしょうね。」
部長「だろうな。1月だからな。」
旅人K「とにかく急ぎましょう。」
急いで食べるとミルミル無くなり、周りでニヤニヤ見ていた子供たちもあまりの早さに驚くほどだった。
桃太郎「やれば出来ますね。」
部長「何とかなったな。あとは旅人Kだけだ。」
旅人K「大丈夫だよ。走ったから喉渇いたから。」
マルカンデパートのソフトクリームをたいらげた三人は、急いで食堂を出る。
また階段をひたすら駆け下りていく。
時間はまだ、16:26だった。
あと18分。
外は寒い。しかし、ダッシュしてるので暑い。
しかし、胃の中は冷たい。
花巻駅に向かう三人の体調はこんな感じだ。
「急がなければ大変な事に!」こんな心境で走ることは今までの旅では無かった気がする。
人は本当の窮地に追い込まれれば、不可能も可能に変えると言われるが、まさに今三人はそんな感じで走っていたに違いない。
だからと言って花巻駅はまだまだ見えない。
行きの疲れで、思ったように走れなくなり歩く事も多くなる。
運動不足も有るが、1kmもの道のりをダッシュするという事それ自体が容易ではない。
それでも三人は花巻駅を目指した。
つづく